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自由研究 弱い電源で負荷を間欠動作させる回路

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ここ数日格闘している回路の話をします。面白いので聞いてください。

無線電力伝送を実用しようと画策していて、例えばこの記事のような実験をやっています。

mechanic.pilotz.jp

LEDを点灯させて喜んでいるのを見てわかるかと思いますが、今のところ実用には程遠い状態です。

弱電では効率が出ないという情報もあるし、他にも送電側の改良が必要なのは明らかにそうなんですが、今日は受信側の改良を考えます。

受信コイルの状況的には、電圧は来ているけど電流がそれほど誘導されていない。しかも波形が汚いといったところで、これをうまく使いこなせれば、ラジオ電波のハーベスティングとか、曇りの日の太陽電池といった、信頼性の低い電源全般にツブシが効きそうです。

ということで、出力インピーダンスが高い電源を出力インピーダンスが低い電源に変換する魔法の回路を探します。

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そんなものはないので微分的なもので我慢します。間欠動作っすね。

ダイオードで整流したあと、大きい電解コンデンサなりEDLC (電気二重層コンデンサ)なりを充電して、ある程度電荷が溜まったら負荷を接続してガーッと一気に駆動するってことを自動でやりたいわけです。

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やりたいことはシンプルなのに、この回路、なかなか検索に引っかかりません。発振回路の一種なことはわかるけど、大抵の回路ではコンデンサがbc間にあったりしてこりゃあかんとなります。

問題は、充電したCの放電で負荷を駆動したいというところです。大抵の発振回路ではCは時定数として使って、電源-負荷-GNDの経路を導通させることで駆動させるようになっています。自分でなんとか考えてみようとしましたが、頭がフライになって諦めました。

それもそのはずで、実はこれ、弛張発振回路のしかも今となってはちょっと特殊なタイプの回路だったのでした。なんだよサイリスタって!なんだよPUTって!なんだよUJTって!ネオン管ってなんだよ!マイコン時代にアナログ回路を独学している人間には知らないモノがたくさんあるのでした。

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重要なのは負性抵抗(正確には微分負性抵抗)で、これがないとうまくいかないようです。要するに、導通開始電圧が導通を維持するのに必要な電圧より高いという特性です。これを使うと、Cの+側と負荷を一時的に直結するということがスッキリできます。

微分負性抵抗領域を持つ部品には、以下のようなものがあるようです。

一番使いやすそうなのはPUTで、導通開始電圧を自由に設定できるようになっています。構造はpnpn接合の2番目のn型半導体からゲートが出ていて、あとは両端からそれぞれアノードとカソードが出ているといった風情です。ゲートで設定した電圧になると導通するダイオードと考えるといいです。

PUTについて詳しくはこちら: PUT/逆方向(Nゲート)サイリスター

以下のサイトには、PUTの使い方と合わせて、pnpトランジスタとnpnトランジスタを組み合わせてpnpn構造をミミックする方法も載っています。

PUTを使った実験(その2)

上記のリンク2つは、LEDの点滅の例ですが、目を凝らして探していたら、悪コンディション下で間欠ソーラー駆動を行う回路も見つけました。 これはBEAM Roboticsっていうムーブメントでよく使われるらしい、Solar Engineという回路を集めたものです。

BEAM Circuits -- Type 1 SEs

こちらもどうぞ: すいか実験室(電子工作): 電気二重層キャパシタでの電力実験

BEAM Robotの実例はこちら: makezine.com

Solar Engineは色々なバージョンがあるみたいですが、やっぱりこれもpnpとnpnを組み合わせてpnpnを作るもので、PUTのミミックのようです。 追記: よく見たらちょっと違いました。これはこれで面白い。負性抵抗はどうやって作ってるんだろう。

さらに追記: 実験してみたところ、Solar Engineはやっぱり負性抵抗がないため、Zenerやダイオードで設定するtrip voltageの周辺でプツプツ細かく充放電するようです。下のPUTでモータを動かしてる動画では、trip voltageを越えると、大電流がドバッと出て、キャパシタがほぼ空になりますが(導通維持電圧まで下がる)、そういう挙動ではない。

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LTSpiceで実験。PUTはないのでpnp-npnで代用。

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放電箇所の拡大。

デッドストックのPUTが手に入ったのでLチカの再現実験。石一つで点滅している。

トランジスタ2石の回路もちゃんと発振した。

2000uFを5Vまで充電させればモーターも動く。てことはマイコンも楽々動く。BLEビーコンはばっちり発信した。

PUTは現在国産品種は廃版となっていて、手に入りづらいかもしれませんが、海外ではまだまだ生産中のようなので、みなさんぜひPUTの消費を増やして、絶滅を避けましょう。

大容量コンデンサを使った間欠駆動という旨の記述を含んだ記事が、インターネットには皆無に近かったのに危機感を覚えたので、取り急ぎ書きました。

以上です。