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宇宙の作り方とその段階

Star Cluster AP323
Source: Hubblesite.org

こんにちは。アマチュア理論物理学者の山下です。

今日は宇宙を作ってみます。 *1

宇宙たる要件

理論物理学では、物理的特性の集合を宇宙として扱う。物理的特性とは、観測によって得られたデータや、それを説明する式や定数のことで、例えば: 真空エネルギー,時空の幾何,力の強さ,粒子のスピン,ラグランジアン などの事柄である。全ての物理的特性を生じさせる一つの式すなわちTOE (Theory of Everything)があるのが理想であるが、僕らはまだ"この宇宙"のTOEを発見していない。

物理学の宇宙の定義は時代を経て変遷する。観測値により近い予測を行う宇宙が採用されるが、その発見以前には、誤ったものを宇宙として扱っていたことになる。例えば、特殊相対論以前には絶対時間がある宇宙が想定されており、実際に理論物理学はこれを宇宙として扱っていたのだ。理論物理学には、誤った(この宇宙での観測値と一致しない)宇宙論を扱う能力があることがわかる。人工宇宙が"この宇宙"の完璧な模倣でなくても、理論物理学の範疇で研究できるということだ。

物理的特性の集合が宇宙であるという定義は、重大な意味を持つ。これが宇宙作りを可能にするのだ! {人工宇宙の特性, ...}{"この宇宙"の特性, ...} という2つの宇宙に有意な区別はなく、強いて言えばTOEの美しさくらいしか優越の基準がない。宇宙を作るのは至極簡単なのだ。

問題は、面白い宇宙の作り方だ。これが難しい。今回は私の独断と偏見で面白い宇宙の要件を段階順に並べることにする。

  • 内部から観測できること。
  • 内部に観測者がいること。
  • 内部の観測者が矛盾のない、観測事実によく一致するTOEを手にできること。
  • 実行プロセスが物理宇宙と切り離されること。
  • きれいな星座がみれること。

一つ一つ順番に見ていこう。

内部から観測できること

内部からある程度以上の解像度で観測できることは他の要件を満たす上で非常に重要だ。観測とは可視化された宇宙を視ることであり、つまり可視化手法は重要である。可視化とは言っても僕ら人間向けではなく、内部の観測者向けの可視化だ。ある軸を選んで時間軸とし、時間軸に沿って時空をサンプリングさせるという微積分的な手法はたしかに魅力的である。

内部に観測者がいること

宇宙の構造の一つとして、観測者が存在しなかったら面白くない。そんな宇宙はスクリーンセーバーか、せいぜい便利なシミュレーションくらいにしかならない。内部の観測者を手にいれる幾つかの方法を示す。

  • 僕らがアップロードする。
  • 人工的に作る。
  • パラメータをいじりつつ自然発生するのを待つ。
  • パラメータのばらついた多宇宙で自然発生を待つ。

美しいTOEがあり、それが発見されること

これを実現するには、観測者は自然発生させるしかない。その他にも、時空の幾何(曲率,次元など)やインフレーションなど、考えることはたくさんある。この要件を満たす宇宙は、僕らの住む"この宇宙"より、一歩先んじる。

実行プロセスが物理宇宙から切り離されること

例えば宇宙をコンピュータシミュレーションとして実行する場合、コンピュータが壊れるなり太陽が死ぬなりすると実行が止まってしまう。時空の大きさを、外部から見ると有限だが、内部から見ると無限であるようにするなどのテクニックを使って、"この宇宙"への依存をなくす必要がある。

きれいな星座が見れること

宇宙を名乗るなら星空くらいはもつべきだ!

まとめ

人工宇宙が物理宇宙と肩を並べる要件と、これに面白さを追加するいくつかの案を段階順に提示した。

長い道のりですが、頑張りましょう。

オススメの本です

*1:先に断っておくと、僕はクリエイショニストでも、IDでもない。この取り組みはむしろこれらの否定である。ポイントは、ある宇宙が知性によって創造可能ならば、いかにその確率が低くても、物理作用によってランダムにその宇宙が組み上がる可能性を排除できないことだ。観測されてもいない人格を作り上げて創造者とするのは思考停止であり、科学者としてはこの宇宙の存在を可能とする枠組み(マルチバースなど)の物理を探求しなければならない。