Real World Objects // Speaker Deck
1年前のトーク(↑)の続き。 実世界をモデルしようとしたときに、考察もなしに「全てがオブジェクトだ」とか「全ては不変データと関数で表現できる」って言っちゃうのは早計なんじゃないかと思ってたまーーに思い出したように考えてた。Smalltalkビアバッシュに向けてのウォームアップです。
観測
モノ: 記憶はない。モノの歴史は風化や傷や炭素14の比率としてモノ自体に記録される。作り出されてからは崩壊への一途。劣化の度合いは他のモノとの干渉によって変わる。
ヒト (subclass of モノ): 不完全な記憶がある。記憶の中にはモノの見た目のスナップショットがある。同じものを違う時点で複数回見たとしても昔の記憶が書きかわるわけではない。記憶は各人それぞれ微妙に異なり得る。記憶は時間とともにあやふやになっていく。再帰的に自身の状態を更新していく。軽微な傷などは治癒する。思考と会話ができる。モノの状態を直接書き換えられる。
ロボット (subclass of モノ): 時系列やモノの見た目について完全な記憶を持ち得る。再帰的に自身の状態を更新していく。(限定的な)思考と会話ができる。モノの状態を直接書き換えられる。
環境: モノの集合。空間方向と時間方向に広がりを持つ。とくに何もしない。すべてのものの完全な記憶を持ち得る。
モデル
モノ: 過去の状態が全て保存される必要は無い。スナップショットを撮れるミュータブルな辞書等で表現する。環境(ランタイム)やヒトがだんだん劣化させていく。
ヒト: 視界に入ったもののスナップショットを撮って、それまでの記憶と関連付けて記憶する。正確な時系列にソートはしない。記憶は数サイクル毎にGCされる。このとき個々の記憶自体が欠落するのではなく、それぞれの記憶が非可逆圧縮される。通信インターフェースと計算ユニット(強いAI)を搭載する。動作原理はVOCのモデルに準拠する。
ロボット: 視界に入ったもののスナップショットを撮って、それまでの記憶と関連付けて記憶する。記憶は時系列でソートされたGCされないスナップショットの配列に入る。通信インターフェースと計算ユニット(弱いAI)を搭載する。動作原理は基本的にVOCのモデルに準拠するが、ロボット同士であればメッセージングも可能。
環境: モノの集合を扱う。とくに何もしない。
表面的な観測から言えるのはこういったことまでで、宇宙がオブジェクトでできてるとか、宇宙は再帰関数とpersistent data structureでできてるとか、宇宙はセルオートマトンなんだっていうのは推測にしかならない。ただし相対性理論とか多世界解釈とかを考えた時に表現しやすいモデルとそうじゃないモデルはある。証拠が発見できるような事柄なのかもわかんないけど、宇宙の計算モデルが確定する科学的な証拠が発見されたら泣いて喜ぶ。知ってたら教えてください。