標高+1m

Don't be rational.

We Need More Space!

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  • 「この宇宙」と書くとき、これは観測可能な宇宙を表す。
  • 「宇宙」と書くときは、数学的に可能な宇宙を表す。

モノの抽象間のコミュニケーションを扱うプログラミングパラダイムについて研究している。既存の例としてはオブジェクト指向が有名であるが、オブジェクトはモデリングの失敗例である。オブジェクト指向は間違ったモデルの上に組み立てられた宇宙であり、僕らの住むこの宇宙のアナログであるとは言い難い。*1 そこで、今回はモノの抽象とそれらのコミュニケーションとして、より適切なモデルを模索してみよう。

まずは既存のモデルを物理的に解釈してみる。モノの抽象を扱う仮想のパラダイムxを使って記述する宇宙は以下の特性をもつとしよう。

  • 時間発展が実時間に依存している。
  • (スレッド内では)同期プログラミング。つまりモノAからモノBに、メッセージはゼロタイムで伝わる。
  • メッセージは宛先を知っている。

上記の3点は、この宇宙が超光速リンクが縦横無尽に走るSF的宇宙か、さもなければグラフの全ノードが1点に縮退し、エッジがくしゃくしゃに絡まったみじめな宇宙かであることを示唆する。

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どちらにしても、僕らがモデリングの対象とするこの宇宙とは似ても似つかないことは確かだ。注意して欲しいのは、このような宇宙は存在し得るということだ。ただし、こんな宇宙にあるモノを、僕らの宇宙のモノの記述として扱うのはちょっと大雑把過ぎる。

(普通の意味での)超光速コミュニケーションを禁止すると、グチャッと一点に凝固したグラフ宇宙になる*2。こんなに自由度が低い宇宙ではろくに歩き回ることもできず、まともに思考できるわけがない。 Hence the title "We Need More Space!" ここから出してくれ!

と、いうわけで特殊相対論を初めてちゃんと勉強した。サスカインド教授のレクチャーシリーズがオススメ。これを見てあとはグラフを描きまくれば理解できる。

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特殊相対論が、時間と空間の関係を与えてくれるので、これを使えば今までのようにグローバルな時計を動かして直径1プランク光秒の閉所に自分たちを閉じ込めなくて済む。言い方を変えると、空間が欲しかったら時間のことも気にかけてやる必要があるってことだ。

ローレンツ変換や、光円錐とトラジェクトリの交点の判定などのテクニックを駆使して、特殊相対論的に正しいと思われるコミュニケーションモデルのシミュレーションを作成できた。clojureで、計算にはexpresso,可視化にはquilを使った。expressoは開発が止まっているようで、SNAPSHOT版は動かないので注意。とても便利。

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光速まで(0 ≦ v ≦ c)の速度を持つ慣性系どうしが、0 ≦ u ≦ cの速度の情報を交換する現象を記述できるようになったわけだ。

今のところ簡単のため空間次元はxしか扱っていないが、少なくとも2次元の自由度は得られた。やっと歩き回れる空間が手に入ったんだ。

実を言うと上記uがc未満のときの可視化にバグがあるため、コードの公開はしばらくお待ち下さい。核心部分は大体こんな具合です。

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また、基本ではあるが、核心的部分については再帰的に定義し、内在するロジックだけで時間発展できるよう留意しました。

引き続きワッチしてください。

*1:オブジェクトをモノの抽象であるかのように宣伝せずに、抽象的な仮想機械であると説明するならば、その利便性については太鼓判を押そう

*2:ちょっと言い過ぎで、この近似でも1秒以内の誤差で直径30万kmの球は手に入る